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解答




【 解説 】

債権の消滅時効の問題です。債権の消滅時効の問題では、貸金債権を思い浮かべる方が多いかと思います。本問では賃料債権が出てきて戸惑った方もいらっしゃるかもしれません。賃料債権だからと言って慌てる必要はありません。基本的には同じです。

◆1
債権を有しているからと言って、いつまで経っても相手方に請求できるというわけではありません。ある一定の時間が経過すると、債権が消滅し、権利行使することができなくなってしまいます。これが時効です。

では一定の時間が経過すると必ず権利が消滅してしまうのかというと、そんな事はありません。長い間権利を行使しないからこそ、消滅してしまうのです。

権利を有していながら権利行使ので、眠ってしまっているのと同じことです。眠っているので、当然権利行使できません。なので、このことを「権利の上に眠る」という言い方をします。

逆に言えば、権利を行使していると言える状況があれば消滅しません。権利を行使していると言えるということは、眠っていない、つまり起きているということです。これを時効の中断と言います。

債権が消滅するための時効期間は、債権の種類によっても時効期間は異なりますが、通常10年です。本問で出題されている月額の賃料債権は、5年で時効にかかりますが、本問ではこの点は問題になっておりませんので、気にする必要はありません。

さて、一般的な金銭債権の場合、10年間で時効にかかりますので、10年間自己の金銭債権を放ったらかしにしておくと、時効により消滅してしまいます。「放ったらかしにする」というのは、権利の上で眠っているということです。

しかし、そんな事は、普通は債権者としては避けたいところです。

そこで、債権者としては債務者に対して「請求」したり、債務者所有の不動産を「差押」したりと、消滅しないための手段をとることになります(147条)。このような手段をとっていれば、「権利を行使しなかった」とは言えませんね。

かかる手段をとることによって、時効の中断が生じます。

時効の中断が生じると、時効の進行がスタートに戻ります。すごろくで言うところの、「ふりだしに戻る」というイメージです。

問題なのは、何をすれば中断するかです。時効の中断事由は民法147条で@請求、A差押、仮差押又は仮処分、B承認と規定されております。

そしてこの@請求に当たるものが147条以下にさらに詳しく規定されていますが、その中の一つに支払督促があります。そしてこの支払督促については、民法150条に「支払督促は、債権者が民事訴訟法第392条に規定する期間内に仮執行の宣言の申立てをしないことによりその効力を失うときは、時効の中断の効力を生じない。」と規定がされています。

この民事訴訟法392条とは何かです。

「債権者が仮執行の宣言の申立てをすることができる時から30日以内にその申立てをしないときは、支払督促は、その効力を失う」と規定されています。

「債権者が仮執行の宣言の申立てをすることができる時から30日以内」というのが、本問でいうところの「期間内に」ということです。

ようするに、支払督促は適法な期間内に仮執行の宣言の申立てをしなければ、時効の中断の効力が生じないということです。逆に言えば、適法な期間内に仮執行宣言の申立てをすれば、消滅時効は中断するわけです。

以上より、肢1は正しい肢ということになります。


◆2
時効の利益をあらかじめ放棄することは出来ません(146条)。これは強行規定であり、当事者間であらかじめ放棄する旨の合意があってもダメです。

もしあらかじめ時効の利益を放棄することが出来るとすると、債権者としては自分の権利がなくなることがないように、必ず債務者に時効の利益を放棄させます。そうすると、永遠に時効が成立しないことになります。これでは、そもそも時効の制度を設けた意味がなく、制度趣旨に反することになります。権利の上に眠っている者を保護してしまうからです。

よって、当事者間で時効の利益をあらかじめ放棄することを取り決めたとしても、これは無効です。

以上より、肢2は正しい肢ということになります。


◆3
本肢のように内容証明郵便により支払請求は、催告にあたります。

催告は裁判外で債権者が債務者に対して「お金を払いなさい」と請求することです。まさに本問の内容証明郵便による支払請求です。この催告は、ただ単に催告しただけでは、時効が中断しません。

催告してから6ヶ月以内に裁判上の請求、支払督促の申立て、和解の申立て等をしなければ、時効は中断しません(153条)。

本肢ではそのような事情がありませんので、時効は中断しません。

よって、肢3は誤った肢ということになります。


◆4
時効が完成しても、その時効の利益を受けるかどうかは、個々人の問題です。「時効が完成したけれども、私は時効の利益を受けません。」ということも認められています。これを時効の利益の放棄と言います。

このように時効が完成した後であれば、時効の利益を放棄することが出来ます。この時効の利益の放棄は、「自分は時効による利益を受け取りません」という積極的な意思表示です。ですから、時効が完成しているということを知っていることが前提となります。

では、時効完成後に時効の完成を知らずに承認した場合、「もし時効だったということを知っていたら、時効を援用したのに!」と言えるのでしょうか。本肢のように、時効の完成を知らずに承認してしまった場合はどうなるのか、問題になるわけです。

この点について判例は、債務者が自己の負担する債務について時効が完成したのちに債権者に対し債務の承認をした以上、時効完成の事実を知らなかったときでも、事後その債務についてその完成した消滅時効の援用をすることは許されないと判断しています(最昭判41.4.20)。

つまり時効の完成を知らなかったとしても、債務の承認をした以上は時効を援用することは出来ないのです。

よって、本肢は正しい肢ということになります。


以上より、肢3が正解となります。


【 解き方 】
肢2は有名な条文ですし、肢4は有名な判例なので、この二つは正しい肢と判断がつきやすいと思います。そこで肢1と肢3を比較すると、肢1は支払督促の申立てをし、さらに期間内に適法に仮執行の宣言の申立てをしています。他方、肢3は内容証明郵便により支払を請求しているだけです。この二つを比較すると、なんとなく肢1のほうが様々な手段を講じているので、時効の中断が認められてもよさそうな気がしませんか。そこに考えが及べば、細かい知識はなくとも、肢3は誤っていると推測できるのではないかと思います。



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