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解答
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【 解説 】
解除についての出題です。解除は非常に重要な分野ですし、論点も多いです。過去問を見ても頻繁に出題されています。しっかりとした学習が必要でしょう。
◆1
いわゆる解除前の第三者の論点です。
契約を解除すると、最初にさかのぼって何もなかったことになるわけです。何もなかったことになるというのは、AB間の土地の売買がなかったことになるわけです。そうするとBは所有者でなかったことになります。Bが所有者でなくなると、Cは所有者でない者から買ったことになります。なのでCは所有権を取得できないはずです。つまり解除した結果、Aは依然として所有者になるはずですので、AはCに対して所有権を主張できるのではないかというのがここでの問題点です。
まず、いつAが解除したのかという点が重要です。今回はBC間の売買の後に、Aが解除したということが重要なのです。ちなみに、このようなCを「解除前の第三者」といいます。Aが解除する前に、すでにCが現れているからです。「Aが解除をする前に現れた第三者」という意味です。
このような解除の場合、AがCに所有権を主張できずに、Cが保護されることがあります。
でも、無条件に保護されるわけではありません。545条1項但書に規定があります。
結論は、Cは善意・悪意は関係ないが(つまり悪意でも保護される)、保護されるためには登記が必要です。
それはなぜでしょうか。
Bが自らの履行を遅滞していることを、Cが知っていた(つまり悪意)としても、「Bはいずれ履行する」ものと、Cとしては考えるのが普通です。というよりも、Bは自分の債務ですから履行するのが普通です。Bがきちんと自らの債務を履行しさえすれば、解除はなされないのです。つまり、Cとしては、解除がなされるかどうかは、わからない状況なわけです。
このような中、Cに善意を要求しても酷です。それに、条文上も要求されていません。
ところが登記は必要です。ここで、Cに登記まで不要とすると、今度はAに酷です。
つまり、本来Aは何も悪くないのです。悪いのは、きちんと自分の債務を履行しなかったBです。ここで、もし登記もないCを保護するとなると、それはAを保護しないことを意味します(つまり土地はCのものになる)。それではAがかわいそうです。Aは自らの債務をきちんと履行しながら(少なくとも、弁済の提供は必要です)、相手方Bが債務を履行しないために、仕方なく解除したのです。登記さえもないCを保護するとしていたのでは、何のためにAは解除したのかわからなくなってしまいます。
そこで、何も悪くないAを犠牲にしてまで、Cを保護するわけですから、そのようなCは登記ぐらいは具備してくれ、ということです。AとCとのいずれを保護するかという問題点で、そのバランスとしてCに登記を要求したわけです。
よって、第三者Cが保護されるためには、善意悪意は問わないが、登記の具備が必要となります。
肢1のCは登記を具備していますので、代金債権が不履行であることを知っていたとしても、保護されるわけです。つまり、AはCに対して土地の所有権を主張できないということになります。
よって、肢1は正しい肢となります。
◆2
契約を解除すると、最初にさかのぼって何もなかったことになりますので、受け取ったものがある場合には、当事者は相手方にそれぞれ返還しなければなりません。土地を受け取っていれば土地を返還し、お金を受け取っていればお金を返還するわけです。返還しなければ、何もなかったことにならないですからね。これを原状回復義務と言います。
そしてその原状回復義務を履行する場合に、その中に金銭が含まれている場合には、金銭を受領したときから利息をつけなければなりません(545条2項)。
この金銭の場合と公平を図るため、買主が目的物の引渡しを受けていた場合は、使用収益して得た利益を返還しなければなりません。
つまり本肢のように貸駐車場として収益を上げていた場合には、その収益も渡さなければならないわけです。
よって、肢2は誤った肢となります。
◆3
売主と買主がお互いに原状回復義務を負っている場合、それぞれの義務は同時履行の関係にあります(546条)。
本肢のBのように自ら債務不履行をして解除されたとしても、この同時履行の抗弁権が奪われるわけではありません。
よって肢3は誤りです。
◆4
契約の解除をした場合に、損害があれば、損害賠償請求をすることが出来ます。これは原状回復義務を履行しても損害がある場合に、その損害を賠償させるために認められているものです。
よって肢4は誤りです。
以上より肢1が正解となります。
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