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解答
4
【 解説 】
◆1
瑕疵担保責任の問題です。まずは瑕疵担保責任の制度趣旨は何かです。制度趣旨とはどういう意味かと言うと、なぜこのような制度があるのかということです。その規定をつくった理由ともいうべきものです。
瑕疵担保責任の制度趣旨は、契約における両当事者間(売主と買主)の公平を図る点にあります。
例えば中古車の値段が100万円だとします。購入した車が、そのまま普通に走ってくれれば、問題はありません。
しかし、見えないところに故障があることによって、走らなかったり、修理が必要だったりしたとします。
そうすると100万円とはつりあわないことになります。イメージとしては、天秤の両側のはかりに「中古車」と「100万円」をのせると、バランスがとれないということです。これでは、両当事者間の公平が図れないですよね。
そこで、両当事者間の公平を図り、中古車と金銭とを吊り合わせるために、瑕疵担保責任の制度があるのです。
ここで、両当事者がつりあうためにはどうすればよいか、簡単に考えてみましょう。
100万円も中古車も天秤の上から取ってしまえば、天秤はつりあいます。何もない状態ですから、当然ですね。
また、中古車は故障している分、価値が低いということになりますので、故障分の値段を下げると天秤はつりあうことになるかもしれません。また、売主が故障分のお金を買主に支払うという方法もあるかもしれません。
これらのことを瑕疵担保責任と言います。
瑕疵担保責任が認められるためには、買主は、瑕疵の存在について善意である必要があります。悪意の買主は、損害賠償や解除を主張できません。
買主が悪意の場合には、瑕疵の事を承知したうえで購入したものと考えられます。つまり、つりあわない状態を承知して、購入しているということです。このような悪意の買主に、損害賠償や解除を認める必要はありません。
そして、ここでの瑕疵担保責任は無過失責任です。売主は過失の有無にかかわらず瑕疵担保責任を負います。
肢1において売主Aは瑕疵の存在について気付いていませんが、瑕疵担保責任は無過失責任ですので、瑕疵の存在を知らなかったからと言って責任を免れることは出来ません。また買主Bも瑕疵があることに気付いておらず、かつ、気付かなかったことにつき過失がないので、責任を追及できます。
よって肢1は誤った肢です。
◆2
本肢は手付についての出題です。
解約手付として手付が交付された場合、当事者は契約を解除することができます。
しかし、いつまででも契約を解除できるとすると、解除される側はたまったものではありません。
そこで、「当事者の一方が契約の履行に着手するまでは」(557条1項)と定めて、解除のできる時期にしばりをかけています。
ここで、履行に着手する前であれば解除できるとした趣旨は、自ら履行に着手した者は、契約の履行への期待が大きいからです。履行に着手をなした段階で相手方より契約を解除されると、それまでの努力も期待もすべてが無になってしまいます。それではかわいそうです。
よって、「履行に着手するまで」として、解除できる時期を制限しているわけです。
本問に即して言えば、売主Aが履行に着手したと言える段階になったら、買主Bは解除を出来ないことになります。逆も同様です。買主Bが履行に着手したと言える段階になったら、売主Aは解除できません。
とすれば、たとえ履行に着手した後でも、自ら履行した者が解除をするのであれば、解除することを認めたとしても、差し支えないことになります。自分の努力や期待を、自分で無にするからです。
つまり、Bが履行に着手したと言える段階になっても、売主Aが「履行に着手」していないのであれば、B自身は依然として解除ができるということです。
よって肢2は誤った肢ということになります。
◆3
本肢は他人物売買についての出題です。
Aは甲土地の所有権を有していないにもかかわらず、Bとの間で他人所有の建物の売買契約を締結しています。これを他人物売買といいます。「他人の物を売買している」ので他人物売買です。まあ、そのままの名前ですね。
他人の物を売買するなんてけしからん、と思われる方もいらっしゃるかもしれません。というよりも、「けしからん」と思うほうが常識的でしょう。確かに、けしからんことはけしからんです。
でも、この場合でも、AB間の売買契約は有効です。
但し、所有権はBには移転しません。当然ですね。これで所有権が所有者からBに移転したのでは、そもそもの所有者にしてみれば踏んだり蹴ったりですもんね。所有権は、依然としてそもそもの所有者にあります。所有権は移転しないものの、AB間の売買契約としては有効ということです。
この場合、売主Aとしては、買主であるBに所有権を移転させるために、努力をしなくてはなりません。具体的には、Aはそもそもの所有者から所有権を取得し、そしてBに所有権を移転させる義務があるのです。
でも、よくよく考えてみると当たり前ですよね。Bとしては、当該甲土地が手に入ると思っているわけです。つまり、他人物の売買であったとしても、Aが無事に甲土地を手に入れて、所有権がそもそもの所有者からA、そしてAからBに移転するのであれば、問題ないわけです。
以上より、肢3は誤った肢ということになります。
◆4
買い受けた甲土地に抵当権の登記があるときは、買主Bは抵当権消滅請求の手続きを終わるまでは、その代金の支払いを拒絶することができます。また売買代金から抵当権消滅請求に要した費用を差し引いて、売主Aに支払うこともできます。
このようなやり方を認めることが公平ですし、さらに手続も簡便になるということです。
よって肢4は正しい肢となります。
以上より、正解は肢4となります。
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