「これで宅建合格」のトップページ平成22年過去問>第4問

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解答




【 解説 】

二重譲渡の対抗問題だけでなく、時効や意思表示など幅広く民法の知識を問う問題です。しかし問われていることは基礎的なことであり、難易度は高くありません。


◆肢1
本肢ではB→A、B→Cと売買がなされており、まさに二重譲渡の対抗問題の場面です。この場合には、先に登記を備えた方が所有権を主張できます。契約締結の時刻が早い方ではありません。

ところで、もし仮に売買契約書の日付が異なっていても、日付の前後ではなく、先に登記を備えた方が所有権を主張できます。ですからB→Aの売買契約書の日付が10月1日であり、B→Cの売買契約書の日付が10月2日であっても、Cが先に登記を備えれば、Cが所有権を主張できます。

よって肢1は誤っています。


◆肢2
本肢に記載されている「BA間の売買契約締結の時期にかかわらず」の意味は、「BA間の売買契約の締結が、強迫されたことによる取消の前なのか、それとも取消の後なのか、そのいずれであっても」という意味です。

売買契約締結の時期が、脅迫取消前の場合
この場合、時系列に従うと、
@Bの脅迫
ACB間の売買契約
BBA間の売買契約
C強迫により締結されたとして取消
こういう順番で事実が発生したことになります。この場合、取り消す前に第三者Aが出現しているので、取消前の第三者という言い方をします。

強迫の場合には、Aは善意でも保護されません。つまり、例えAが善意であったとしても、CはCB間の売買を強迫されたことを理由として取消すことによって、土地をAから取り戻せるのです。この場合、Cは登記を備えている必要はありません。96条1項には詐欺と脅迫の両方のことが規定されているにもかかわらず、3項には詐欺の場合だけが規定されており、強迫の場合には規定がないことにより、第三者は保護されないのです(ちなみに96条3項で保護されるためには、第三者は「善意」が必要)。このような差が出てくる理由として、詐欺よりも強迫された人の方がかわいそうだから(つまり保護すべき要請が強い、ということ)と言われています。よってCは登記がなくてもAに対して所有権を主張することができます。

売買契約締結の時期が、脅迫取消後の場合
この場合、時系列に従うと、
@Bの脅迫
ACB間の売買契約
B強迫により締結されたとして取消
CBA間の売買契約
こういう順番で事実が発生したことになります。この場合、取り消した後に第三者Aが出現しているので、取消後の第三者という言い方をします。

この場合はCとAは対抗関係になってきます。つまり本肢においては「CとAとで先に甲土地の登記を備えたほうが勝つ」ということになります。これは、Bの取消によって、甲土地の所有権がBからCへ復帰します。そのあとCで売買契約があります。そうするとBを基点としてB→C、B→Aと、二重譲渡があったかのように考えられます。二重譲渡があったわけですから、対抗関係になるわけです。つまりCは登記がなければAに対して所有権を主張することができないということです。

よって、BA間の売買契約締結の時期にかかわらず、Cは登記がなくてもAに対して所有権を主張することができるとは言えませんので、本肢は誤っています。


◆肢3
本肢は、時効完成前にBからAに売買により所有権が移転していたという場合です。時系列は、「BからAへの売買」があり、そのあとに「Cが時効により取得した」ということです。この場合、時効が完成した後に、CはAに対して登記なくして所有権を主張できるでしょうか。

結論から言いますと、Cは登記なくしてAに対して所有権を主張できます。

時効完成前には、Cとしては所有権を有していませんから、登記を具備することは不可能です。「所有権登記」というものは、所有権を取得した結果、具備することができるものです。ですから、時効完成前は、所有権を取得していないCが登記を具備することは出来ません。時効完成後であればCは所有権を取得しますから、Aに対して登記を移転することを請求できます。

つまりCとAは当事者の関係になるわけです。このような場合には、AはBの立場を引き継ぐことになるわけです。ゆえに、Cは登記なくてもAに対して甲土地の所有権を主張できることになります。

よって本肢は正しいです。


◆肢4
本肢のようなCB間のことを、通謀虚偽表示といいます。このような通謀虚偽表示は無効です。つまり、CはBに対して土地を返せと主張できます。Cは自らBに頼んでおきながらムシがいいような気もしますが、返還請求ができます。Bも虚偽の状態を作り出すのに加わっていますから仕方がないとも言えますね。

ここまでは問題ないのですが、問題は第三者Aが登場してきた場合です。

結論から言いますと、Aが善意の場合には、CはCB間の無効を主張してAから甲土地を返してもらえません(94条2項)。ここで言う「善意」とは、BC間が通謀虚偽表示であることを知らない、ということです。Cは甲土地を返してもらえないということは、逆にAは甲土地の所有権を主張することができるということです。

よってAは善意であれば所有権を主張することができますので、本肢は誤っています。


以上より、正解は肢3です。



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