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解答
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【 解説 】
本問は根抵当権というマイナーな分野からの出題であり、しかも肢3や肢4はけっこう細かい点から出題されています。しかし、仮にその点の正誤がわからなくても、「元本確定前の根抵当権には随伴性がない」という根抵当権の基本的事項を押さえておけば、正解にはたどり着けます。
抵当権の場合には、被担保債権が消滅すると、抵当権も消滅します。これを附従性と言います。したがって、そのあとに新たに債権を担保させようとすれば、あらためて抵当権を設定しなおる必要があります。
しかし、このように新たに設定しなおすとなると、手間や費用、時間がかかります。
そこで考え出されたのが根抵当権です。
根抵当権の場合、一つの金銭消費貸借が返済されたとしても、根抵当権は消滅しません。これは根抵当権は極度額という一定の金額が定められ、その金額に至るまで債権債務を担保する性質のものだからです。さらに債権の範囲というものも定められます。この債権の範囲とは、根抵当権によって担保される債権が何かを決めるものの一つです。売買取引や銀行取引等のように規定されます。売買取引と規定された場合には、賃貸借取引によって発生した債権は担保されません。債権者と債務者との間に発生した債権債務であれば、なんでも担保されるわけではないのです。
このような極度額や債権の範囲等といったものによって決められたある一定の範囲に属する債権を担保するのが根抵当権なのです。
例えば、AとB銀行との間で極度額1000万円、債権の範囲を銀行取引と定め、根抵当権を設定したとします。この場合、AがB銀行との間で100万円を借りたとします(第一取引)。そして、一年後にその返済が終わったとします。さらにまた、100万円を借りたとします(第二取引)。そうすると、第一取引、第二取引のいずれも、最初の根抵当権で担保されています。
このように、一つの金銭消費貸借が終わったとしても、根抵当権は消滅しないことを「根抵当権には附従性がない」と言います。
もし第一取引にかかる債権を、B銀行がC銀行に債権譲渡したとします。そうだとしても、根抵当権は移転しません。これを「根抵当権には随伴性がない」と言います。
抵当権は、ある特定の債権と結びついて運命をともにしますが、根抵当権は特定の債権と結びついていないのです。これが重要です。特定の債権と結びつかない担保権として考え出されたのが、根抵当権なのです。
ただし、根抵当権も「ある特定の債権を担保し、このあとからの債権は担保しない」という状態がいずれ到来します。これを元本の確定と言います。元本の確定が生じると、附従性や随伴性が生じます。元本の確定が生じると、ほとんど抵当権と変わらなくなります。
◆まずは肢1です。
抵当権の場合には、担保している利息は最後の2年分です(374条)。
しかし、根抵当権の場合は違います。根抵当権の場合には、抵当権と異なり極度額というものがあります。この極度額までは担保されます。後順位担保権者にしても、前の根抵当権者に極度額まではお金をもっていかれても仕方がないと考えているはずなのです。
よって肢1は誤っています。
◆次に肢2です。
根抵当権は、元本確定前には随伴性を有しません。したがって債権譲渡があったとしても、譲受人は根抵当権を行使することは出来ません。
よって本肢は正しいです。
◆続いて肢3です。
根抵当権設定者は、担保すべき元本の確定すべき期日の定めがないときは、根抵当権設定の日から3年を経過したときは、担保すべき元本の確定を請求することができます。
よって肢3は誤っています。
◆最後に肢4です。
根抵当権設定者は、元本の確定後に極度額を現に存する債務の額と、以後2年間に生ずべき利息等の額に減額することを請求することが出来ます。
よって肢4は誤っています。
以上より正解は2です。
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