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解答
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【 解説 】
相殺についての問題です。かなり難しい肢もありますが、正解肢である肢1は、有名な判例が出ている論点であり、過去にも出題されている論点です。合格のためには落とせない問題と言えるでしょう。
◆まずは肢1です。
本問においては、受働債権が差し押さえられています。受働債権が差し押さえられた場合には、差押前に相殺権者が自働債権を取得していれば、相殺できます。差押前に相殺権者が自働債権を取得したときは、相殺権者としては、「もし相手が払ってくれなければ、相殺すればいいや」と考えているはずです。この期待は保護すべきです。相殺権者が自働債権を取得したときには、まだ差押がなされていないので、相殺ができると考えるのが通常だからです。この場合、弁済期の先後は関係ありません。相殺適状になれば相殺できます。
本問においては、相殺権者はBです。ですからAのBに対する賃料債権は受働債権となります。その受働債権が差し押さえられる前に自働債権を取得していれば、Bは相殺できることになります。Bは差し押さえ前に債権を取得しているので、弁済期の先後にかかわらず、相殺適状になれば相殺でき、差押権者Cに対抗できます。
よって本肢は正しいです。
◆次に肢2です。
抵当権者が物上代位権を行使して、賃料債権を差し押さえた後においては、抵当権設定登記の後に取得した賃貸人に対する債権と、差し押さえにかかる賃料債務とを相殺することは出来ません。この場合、差押後に取得した債権で相殺を認めることになり、抵当権者を害することになるからです。
Bは差押後に債権を取得しているので、相殺できません。
よって肢2は誤っています。
◆続いて肢3です。
賃貸借契約が終了し、目的物が明け渡された場合においては、残存する賃料債権は敷金が存在する限度において敷金の充当によって当然に消滅します。そしてこのことは、明け渡し前に賃料債権に対する物上代位権行使としての差し押さえがあったとしても同様です(最判平14.3.28)。
本問においては、甲建物の抵当権者Eが、物上代位権を行使してAのBに対する賃料債権を差し押さられて、その後に賃貸借契約が終了し、目的物が明け渡されています。この場合には、賃料債権は、敷金の充当によって当然に消滅しており、BはEにそれを対抗することができます。
よって肢3は誤っています。
◆最後に肢4です。
債権譲渡がなされ、譲渡人から債権譲渡の通知がなされたとしても、債権譲渡の通知をしたに留まるときは、債務者は、その通知を受けるまでに譲渡人に対して生じた事由をもって譲受人に対抗することができます。
本問では譲渡人は通知をしたに留まります。ですから、通知時点以前にBがAに対する債権を有しており、相殺適状になっていたということも、当然に譲受人に対抗できる事由となります。したがって相殺することが出来ます。
よって肢4は誤っています。
以上より正解は1です。
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