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通謀虚偽表示

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 通謀虚偽表示は、意思表示の中でも重要な部分です。宅建試験にも頻繁に出題されている箇所です。しっかりと押さえましょう。

1、定義・当事者間での効力
 例えば、Aが所有する土地をとりあえず名前だけBのものとしておく、これが通謀虚偽表示です。
 このようなおいしい話が世の中にあるのか?と疑問に思う方はかなり多いと思います。私もそう思いました。これは実際には次のような場合に行われることがあります。

 例えば、Aが甲からお金を借りていた。甲はAがお金を返してくれないので、Aが所有している土地を取り上げようとしてきた。そこでAとしては土地を取り上げられてはかなわないので、Aは自分が所有する土地を名前だけB名義にしてくれるようにBに頼み、B名義にした。
 このようなケースです。

 このような通謀虚偽表示は無効です。つまり、AはBに対して土地を返せと主張できます。

 Aは自らBに頼んでおきながらムシがいいような気もしますが、返還請求ができます。Bも虚偽の状態を作り出すのに加わっていますから仕方がないとも言えますね。


2、第三者との関係
 はっきり言って、ここまでは問題ありません。問題は上記の例でBがCに売ってしまったような場合です。このような場合でもAはAB間の無効を主張してCから土地を返してもらえるのでしょうか?

 結論から言いますと、Cが善意の場合には、AはAB間の無効を主張してCから土地を返してもらえません(94条2項)。ここで言う「善意」とは、AB間が通謀虚偽表示であることを知らない、ということです。逆に、悪意の場合には、返してもらえます。

 なぜでしょうか?

 ここでAとCを比較してみましょう。Aは自ら虚偽の状態をつくりだしています。はっきり言って悪いヤツです。これに対して、Cは虚偽の状態を作り出すことに加わったわけではありません。ここがBとは違います。しかもCはすばらしい土地を手に入れたと喜んでいるかも知れません。

 そこで、CがAB間の事情(虚偽表示であること)につき善意の場合には、AはAB間が無効であることをCに主張できない、つまりAはCから土地を返してもらえない、ということになるのです。すばらしい土地を手に入れた、と喜んでいるCを保護してあげなくてはなりません。

 一方、Cが悪意の場合(AB間が通謀虚偽表示であることを知っている)には、AはCに対してAB間の無効を主張できる、つまり土地を返してもらえます。Cが悪意の場合には、そもそもAB間が無効であることを知っているわけです。この場合にはCを保護する必要はないことになります。Cが悪意の場合には、AB間が無効であることに便乗しようという意識もあるのかもしれません。そのようなCは保護に値しませんね。

 つまり、ここの問題は、Cが保護するに値するほどかどうか、という問題です。

 法はCが善意ならば保護に値すると考えています。

 なお、ここでCが善意で保護されるためには対抗要件(要するに、土地であれば登記です)を備えていることが必要か、という問題があります。必要ありません。

 上記の例で言えば、Cは土地の登記を具備していなくても保護されます。つまり、土地は返さなくてもよいのです。これは、それだけ虚偽表示をしたAが悪いということです。

 第三者Cとの関係で、転得者の問題があります。
 上記の例で、さらにCがDに売った、というような場合です。CがAB間の事情につき悪意だが、Dが善意の場合はどうでしょう?この場合Dを転得者といいます。はたしてDは保護されるのでしょうか?

 この場合、やはりDは保護されます。Dが保護されるというのは、さきほどの善意のCが保護されるというのと同じです。Dは善意であれば保護され、登記などの対抗要件もいりません。Cの場合と同じように考えてください。

 通謀虚偽表示については、以上のことは最低限おさえておいて下さい。



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